Interview

018. 住まいと事業をひとつの建物で。3階建てにすることで「店舗兼住宅」の理想を叶えた家

京都市内の整骨院で10年以上院長を務めていたというYさま。独立を決心されたタイミングで、kinotoに店舗兼住まいの設計をご依頼いただきました。限られた空間の中で「住まい」と「整骨院」としての役割をどう両立させたのか。そのストーリーをご紹介します。

京都の街で、ずっと家族と。
長年の夢を叶えるチャンスを、kinotoで。

生まれも育ちも京都市西京区だというYさまと奥さま。馴染みのある土地で整骨院兼住居を建てようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

「前に住んでいた家も大手メーカーで建てた注文住宅でした。10年ほど住んでいたかな。"いつかは開業したいね"とは夫婦でずっと話していましたが、テナントを借りて開業すると賃料が発生しますし、住宅ローンの支払いと合わせると月々のコストがかなり上がってしまう......と悩み続けていました。でも、"それならいっそ、今住んでいる家を売却して新しく整骨院兼住居を建てよう"という話になって」と、開業を決意するまでの経緯を話してくれる奥さま。明るく親しみやすい雰囲気の方です。

実は、"いつかは開業して、あなたが院長で、私が受付と医療事務を担当して......"と最初に話したのはご結婚前のこと。長年の想いを叶えるため、それまで住んでいた家を売りに出したところ、おふたりの予想を遥かに超えるスピードで次の住居者の方が決まったそう。

「嬉しい話ではありますが、家を売るってもっと時間がかかるものだと思っていたので、これは早く次の家を建てて引っ越さないといけないなとなりました」

当初、kinotoとは別の設計事務所である程度計画を進めていたそうですが、並行していくつかの工務店や設計事務所を検討し、最終的にはkinotoへの依頼を決めたのだとか。

「kinotoは以前からずっとSNSで写真を見て気になっていました。自然素材だし、デザインも他にないオリジナルな感じだし。当時は京都や兵庫、大阪など他のエリアでも依頼ができると知らなかったんですが、ダメ元で問い合わせてみたらここも依頼が可能だとわかって!最初はオンラインで打ち合わせをしたんですよね」

奥さまにそう言われて、kinotoの担当者も当時を振り返ります。

「そうですね。最初のお打ち合わせで、もう既にお引っ越しの時期が決まっているとお聞きし、とにかくスピード重視で設計や施工を進めさせていただきました。正直言うと、施工が間に合うかどうかかなりギリギリのタイミングだったんですよ。どんな建物にしたいかをその場で聞いてすぐに図面に書いて、ベッドは何台必要かといった、整骨院としてのご要望も聞きながら......」

最初の打ち合わせから引っ越しまでの期間は約8ヶ月。限られた期間の中で、どのように空間の希望を叶えていったのでしょうか。

3階から2階へと光を届ける吹き抜けで、
空間全体を明るく開放的な雰囲気へ。

「家の中で、どこまで開放感を引き出せるかを考えた上で今の間取りを提案させていただきました。2階に窓を設けることもできましたが、それだと隣のお家の方と視線が合ってしまいそうだったので、プライバシーが守れなくなる可能性があるなと。そこで、3階スペースに窓をつくって吹き抜けにし、空間にゆとりを持たせました。また、1階の玄関に大きな土間スペースを、2階と3階にそれぞれ大きめのウォークインクローゼットをつくるなど、収納を一箇所に集約することで、空間全体をスッキリ見せる工夫をしています」と、kinotoのスタッフ。

「他で相談していたとき、バルコニーがある間取りを提案されたんです。その影響か、"バルコニーはいらない"という発想が私たちからは出てこなくて。多分、先入観があったんでしょうね。でも、kinotoは"そういうご要望なら、絶対にこっちの方がいいですよ"と私たちのライフスタイルを考えてくれた上でアドバイスをくれるんです。結局、バルコニーをやめてダイニングを吹き抜けにしたんですが、これが大正解!こんな設計、自分たちだけでは絶対に思いつかなかったでしょうね」と、Yさまも続きます。

そう言われて天井の方を見ると、大きな吹き抜けの窓からは太陽の光が差し込み、シーリングファンが気持ちの良い空気が家中をゆったりと巡っています。ちなみに、あえて窓をつくらなかった2階の壁スペースは、必要に応じて吊り棚をプラスできる設計になっていました。ライフスタイルに合わせて暮らし方を変えられる、嬉しい一手間です。

また、バルコニーをなくした分、ランドリールームは洗濯から室内干しまですべて一貫してできる設計になっているそう。浴室乾燥機能もありましたが、室内の陽当たりが良く、窓を開ければ風通りもいいせいか、室内干しをしても夕方にはしっかりと洗濯物が乾いていると、奥さまが教えてくれました。

さらに、奥さまのご要望もあってリビングの天井は梁を見せた設計に。3階へと続く階段はスケルトンに。空間がより開放的に感じられる一工夫が、あちこちに散りばめられていました。

「この家に越してから、車の音や隣の家の人の物音とかがまったく気にならなくなりました」と、Yさま。以前の家は、お隣のご家族の会話が聞こえてくることも時折あったそうですが、今は、外からの音がほとんど気にならないと言います。

「車通りの多い道路に面しているので、ある程度の音は聞こえるだろうと覚悟していましたが、まったく気にならないですね。こんなに静かな環境で過ごせるなんて、感動しています。それから、やっぱり天然素材だけを使った無垢の家は空気がいいですね。この家で過ごしているだけで、とても気持ちがいいんです」

2階は、家族が過ごしやすい空間なら、
3階は、子どもたちが過ごしやすい場所。

さて、3階はどんな風になっているのでしょうか。お子さま2人の個室と家族の寝室があるという階段を上がってみると、廊下はなく、代わりに各部屋をつなぐフリースペースが設けられていました。

「フリースペースは第二のリビングのような設計にして、お子さまたちがくつろいだり、遊んだりできる空間にしました。書籍がたくさんあると伺っていたので、広めの本棚もつくっています」と、kinotoのスタッフ。

お子さまたちの個室スペースを大きく設けるのではなく、あえて共有スペースを広く取って。成長に合わせて自由に使えるよう、余白をのこしているそうです。ただ、実際に住んでみると、お子さまたちは2階でばかり過ごしているのだとか。

「子どもたちは2階のリビングが大好きで、家にいる間はずっとここで過ごしていますね。本当はもっと3階にいるかなと思っていたんですが、ふたりともリビングがいちばん好きみたいで。もう少し大きくなったら、3階で過ごす時間も増えてくると思います」

長年の想いを叶えた1階は、
「誰もが入りやすい鍼灸整骨院」を目指して。

最後は、事業スペースである1階部分を見せていただきました。

外から見たときに感じた自然素材のやさしい温もりが、中にもしっかりと活かされています。待合室は壁の一面が木張りになっており、それだけで心がやすらぎそうです。

「外から見える壁部分は全面窓にしたいとご希望をいただいたのですが、3階建てなのでどうしても実現が難しくて。建物の安全性とYさまのご要望をしっかりと両立できるよう、相談しながら今のかたちに落ち着きました。待合室の椅子に座ったとき、外からお顔が見えない程度の高さまでを曇りガラスに、上半分を透明なガラスにすることで、院内のプライバシーを守りつつ、開放的な空気になるようにしました」と、kinotoのスタッフ。

床の色合い、ベッドの設置数、受付と施術スペースの動線など、院内をじっくりと見て回ると、ご夫婦おふたりの希望だったと言う「入りやすく、親しみやすい雰囲気を大事にしたい」も「安心して過ごせる施術スペースをつくりたい」も、しっかりとかたちになっているのがわかります。

実は、表に掲げている看板のデザインも、奥さまがkinotoの担当者と一緒に選んだそう。

「デザインとか広告とかSNSとか......そういうのはすべて妻に任せています。僕が考えたアイデアは却下されることが多くて(笑)。看板のデザインとかも気軽にkinotoに相談できるのは心強いですね。とてもいい関係が築けていると感じます。息子たちも少しずつ顔なじみになってきていますし、これからもずっと良いお付き合いが続けば嬉しいですね」

とても温和で優しいイメージのYさま。なんと、以前お勤めされていた整骨院のお客さまが電車やバスを乗り継いで来てくれることも多いそう。Yさまの人柄の良さや技術の高さが伝わってきます。

打ち合わせ中も、工事中も、これからも。
kinotoとなら、家づくりがずっと楽しい。

Yさまと奥さまは、おふたりとも「kinotoとの打ち合わせはいつも楽しかった」と言います。

「梁を見せたいとか、外観はなるべく窓をなくして家っぽくないつくりにしたいとか。そういうプラスアルファな要望を話すと"それをするなら予算が○○円上がります"みたいに、何でもお金の話に直結するものだと思っていました。でも、kinotoは"○○したい"と言えば実現できるかどうか気軽に応えてくれますし、仮に予算をオーバーしそうになっても"だったら、こうしませんか"とこちらの意向を汲んで別の提案をしてくれます。だからかな?"思っていたのと違う"だとか"伝えていた見積よりも高い"といった認識違いがほとんど起こらなかったんですよね。kinotoと一緒に家をつくるのが、最後までずっと楽しくて」と、奥さま。さらに、Yさまも続きます。

「以前住んでいた注文住宅の家も、もちろんこだわって建てたつもりだったんです。でも、ここまで自由には建てられていなかったというか。kinotoと出会えたことで"家づくりって、こんなにこだわっていいんだ"と知れたし、前よりもっと自分たちの家が好きになりましたね。お願いして本当に良かったと思っています」

「いつかはふたりで鍼灸整骨院を」というご夫婦の長年の夢を叶えるために生まれた理想の空間。住まいとしても、整骨院としても、とっても素敵な場所になっていました。