Interview

003. アウトドアも、インドアも。暮らしの喜びを感じられる家

滋賀県内のマンションに暮らしていたYさまご夫婦。「特に不便は感じていなかった」と話すおふたりが、kinotoで家を建ててから5年。どんな家づくりを体験し、そして、どのように暮らしてきたのか......この家を巡る物語をうかがいました。

暮らす楽しみを味わいたかった。

琵琶湖のほとりの、とある住宅街。裏手に茂る里山の木々と呼応するかのように、背の高い豊かな植栽が目を引く住宅があります。ここに暮らしているのが、Yさま夫婦です。

「いらっしゃい」。玄関から穏やかな声で出迎えてくれたご主人。早速お邪魔させていただき、お話をうかがうことに。

まずは、この家を建てる前のことを振り返ります。「以前住んでいたのは、駅のすぐ傍にあるマンション。通勤も楽でしたし、生活する上で特に不便は感じていなかったんですよね。でも、そこで10年ほど暮らしていて、ふと"ただ住んでいるだけだな"と気づいてしまって。もっと暮らす楽しみを味わいたいと思うようになっていきました」

そんなとき、愛読しているライフスタイル雑誌で気になる家を見つけたといいます。

「自然に囲まれた環境や、木を基調にした丁寧な設え。そして薪ストーブのある暮らし......そんな家を見て、これは素敵だなって。調べてみたら、その建築事務所が関わった住宅ブランドが、関西エリアにもあるとわかりました。それがkinotoだったんです」

その後、奈良県内のモデルハウスを見学。「やっぱりいいなぁ」と、佇まいに惹かれ、Yさま夫婦の家づくりがはじまりました。

夫婦や生家の思い出を家づくりに取り入れる。

「妻は温泉が好きなんです。夏と冬にいつも温泉旅行に出かけるんです。特に長野県にある古民家の温泉旅館がお気に入りで。そういった場所で流れる、ゆったりした時間や空間を、自分たちの家でも再現したいと思ったんです」。

夫婦の趣味である温泉旅行......お気に入りの旅館で過ごすようなひとときを家づくりのコンセプトに据えることに。設計前のヒアリングでは、夫婦で出かけた旅先で撮影した、いくつもの写真を見せてイメージを伝えたといいます。

「自分たちのイメージを、本当にうまく汲み取ってつくってくれました」何回かの丁寧なヒアリングを経て、完成したYさま邸。1階は土間と和室、夫婦の寝室が。そして2階は、リビングにキッチン、バスなどの生活スペースに。住宅の周囲は、豊かな植栽によって彩られています。

そして、空間づくりには、ご主人の生家の思い出も取り入れました。「和室にある桐タンス。これは私の両親から譲り受けたものなんです。このタンスを置ける空間はぜひ用意してほしいというオーダーもしましたね」。

たしかに、1階の和室は、立派な桐タンスを置いても、ゆとりのある空間。夫婦や生家の記憶を大切に編み直しながら、丁寧に家づくりを進めていったことが伝わってきます。

ディティールに込めた、自分たちのこだわり。

「初めて家に入ったとき、階段を登って、2階につくと、ぶわっと一気に視界が広がったんです。その光景を見たときは、感動しましたね」

家を引き渡されたときの感想を、懐かしそうに話すご主人。特に2階のリビングは、ご主人の想いと、kinotoのアイデアがたくさん詰まった空間に仕上がりました。

「この天井にもこだわりがあって。どんなにお金がかかっても、どうしても梁を出したかったんです。あと、kinotoからの提案で、梁の裏側の天井板は細い板を平行に並べてもらうつくりにしてもらいました。特に階段上の天井は、大工さんの工夫で、白味がかかった木材から赤味がかかったものへ、グラデーションが出るように組んでくれたんですよ」

このリビングの開放感や穏やかな雰囲気は、今でも家を訪れるご友人から評判だといいます。

また、キッチンには、引き戸の食器棚と、カウンター下のオープン棚を設置。これらの収納にも、思い入れがあります。

「若いときから、私も、妻も、器が好きで。食事のときも、"この器とあの器を並べたらきれいかな"なんて話しているんですよ。休日に2人で出かけるときは大体、県内の信楽焼きを観に行っていますね。時間に余裕があれば、島根や長野など遠方に出かけることも。とにかく家の中にたくさんの器があるので、それらをきれいに置けるスペースも欲しいと伝えてかたちにしてもらいました」

満足そうにお話されるご主人ですが、一方で、「もう棚がいっぱいになっちゃったから、また食器棚をつくってもらわないといけないな(笑)」と、話します。

家が変われば、ライフスタイルが変わる。

「この家に引っ越してきて、外出する機会が増えました」と、語るご主人。大のアウトドア好きで、休日は、土間に置かれたカヌーを取り出して琵琶湖でのライドを楽しんだり、会社の同僚とキャンプに出かけています。

「学生時代はヨット部だったので、当時からよく琵琶湖に通っていたんです。頭の中を空にして船を漕いでいる時間が至福なんですよね。この家に住んでから、土間から直接クルマに船や荷物を積み込めるようになったので、とても助かっています。マンションにいたときは、荷物を用意したら、エレベーターに乗って、駐車場に行って......と、なんだかんだ大変で。出かけるまでのアクションが大幅に減ったから外出するハードルも下がりました。よく身体を動かすようになったおかげで、kinotoの担当者の方と久しぶりに会ったときには『痩せましたね』なんて言われたこともありましたね(笑)」

趣味のカヌーについて嬉しそうに話すご主人の視線の先に映る琵琶湖。特注の木製サッシの窓によって、その眺望が美しく切り取られます。さらに、その反対側の窓からは、庭の植栽越しに里山の木々の紅葉が見えました。

「窓の配置も、風景が楽しめるように設計いただきました。琵琶湖側の窓は、隣の家の屋根が眺望に入り込まないように角度を緻密に計算して設計してくれたんです。反対側の窓からは、紅葉はもちろん、冬になれば雪化粧した里山の風景も見ることができます。日々の暮らしの中で目に映る風景は、引っ越してから随分変わりましたね」

また、庭の植栽もご主人のこだわりをしっかり反映。庭師と一緒に、ご主人自らもショップを見て回り、木を選んだといいます。「木々とか、庭とか、自然の風景が好きで。本当は雑木林の中に家を建てようと考えていたくらい。ちょうどいい土地もなかったし、現実的には断念しましたけどね(笑)」

少年のような心で日々を楽しむ。

関西圏の中でもYさまの住む滋賀県は、冬は冷え込み、雪も積もります。そんなときに活躍しているのが薪ストーブです。

「最初に家づくりを考えたときから、薪ストーブに憧れていて。ずっと念願だったんです。わざわざ滋賀や京都で薪を調達しているんですよ。太い薪を仕入れたら、斧でちょうどいい細さに割って、火をくべるときは細い薪から太い薪へ、徐々に炎を移していく......火を起こすのも技術が必要なんですよね。薪ストーブを使うたびに少しずつ上達していくのも面白いんです。なぜか男の子って火を見るのが好きじゃないですか。炎が揺らいでいる姿って、不思議とずっと見ていられるんですよね」と、少年のような心で楽しそうに語るご主人。その表情が、この家を建ててから過ごしてきた時間の豊かさを、色濃く物語っているようでした。

湖や里山など、身の回りの自然と調和しながら、四季の移り変わりを全身で堪能する。これからもYさまの住宅には、そんな豊かな時間が流れることでしょう。