Interview

017. 築34年の家を、「薪ストーブのある理想の家」にリノベーション

築年数が経過した住まいの古き良き部分をのこして、新しく住む人の理想を取り入れるリノベーション。その魅力は、すべていちからつくる新築と違って、もともとある基礎などを活かしながら理想の空間づくりをスタートできること。コストや工事期間が抑えられるなど、新築にはないメリットもたくさんあります。今回うかがったのは、リノベーションした住まいに暮らしはじめて、数ヶ月が経ったOさまご夫婦の家。どんなお話が聞けるのか、楽しみです。

便利で快適なマンション暮らし。
でも、ずっと心にあった"いつかは戸建て"という想い。

Oさまご夫婦が以前住んでいた賃貸マンションは、駅チカで、建物を出てすぐ隣にスーパーがある好立地。

「リビングに南向きの大きな窓があって、すごく住み心地がよかったんです」と、教えてくれたのは奥さまです。

結婚して、約7年かけて築いてきたお気に入りの住まい。それでも「いつかは自分たちの一戸建てを」という想いをあたためていたという奥さま。その理由を聞くと、とてもご主人想いであることが伝わってきます。

「主人が音楽関係の仕事をしているのですが、マンションだと隣や上下に人が住んでいるから大きな音を出せないという悩みがあって。"一軒家だったら、こういうのも解消されるんだけどな......"と考えるうちに、戸建てへ移り住みたいという想いが強くなっていきました」

それから少しずつ、ネットの住宅情報サイトなどを見るようになった奥さま。しかし、立地や陽当たり、予算など、自分たちの理想の条件をすべて叶える物件を探すのはなかなかに大変だったそう。

「条件がいいなと思ったら値段が高かったり、値段がいいなと思ったら面積が狭かったり......うまくいかいない状態が続きました」

分譲マンションやテラスハウスの物件も見ていたそうですが「それだと音の悩みが解消されないし......」と、堂々巡りに。コロナ禍の影響もあり、最初に「一戸建てに住む」という想いが芽ばえてから今の家に移り住むまで、数年がかりになったそうです。

「ようやく見つけたこの家は、最初からピンと来てたんですよね。道路の突き当たりにあるので交通量が少なくて。家の向かいが緑地になっていて、人目もほとんどないんですよ。駅からは少し離れてしまうんですが、それがむしろいい意味で静けさになって、穏やかに暮らせそうだなと思いました」

憧れだった"薪ストーブのある暮らし"。
リノベーションでも、叶えられるとわかって。

物件探しと並行して、工務店やメーカーにもいくつか問い合わせていたというOさまご夫婦。ピンと来たこの家の情報を持って「リノベーションしたい」と相談には行ったものの、なかなか自分たちの納得できる返事はもらえなかったそう。

「もっと築年数の浅い家にしたらどうかと言われたり、自分たちの理想から逸れた提案をされたりと、何となくしっくりこなかったんですよね」と、ご主人。

「どうしたものかな」と悩んでいた頃に出会ったのが、kinoto。最初の打ち合わせから、他とはまったく違う印象を抱いたそうです。

「kinotoは、私たちの理想をどうすれば叶えられるか、すごく一生懸命考えてくれたんです。それから、やっぱり築34年なので耐震条件などの不安はずっとあったんですが、そのあたりのことも専門的に判断してくれて。とても安心できました」と、当時を振り返る奥さま。

「過去の新築事例もたくさん見せてもらいましたけど、間取りや雰囲気が家ごとにぜんぜん違っていて、どれもオリジナリティに溢れているじゃないですか。細かいところまで丁寧に作り込んでいるのが伝わってきたので、リノベーションもここにお願いしたいなと思いました」

さらにもうひとつ、kinotoへ依頼する決め手にもつながったのが「薪ストーブ」。実はOさまご夫婦、薪ストーブがある暮らしにずっと憧れがあったそう。

その話をすると、kinotoはすぐに薪ストーブの職人をこの家に呼んでくれたのだとか。屋根の傾斜はどうか、煙突がうまく設置できるか、排煙状況は問題なさそうか、安全に暮らせるか......くまなくチェックしてくれたと、おふたりは言います。

「いやあ、薪ストーブはいいですね。ずっと炎の揺らめきを見ていられる。あっちばっかり見ちゃって、仕事に集中できず困るぐらいです(笑)。他の暖房器具のようにパッとあたたかくなるんじゃなくて、炎がついてからじんわりと、ゆっくりあたたかくなっていく。それが心地いいというか。つけてもらえて、本当によかった」と、ご主人はご満悦。

奥さまによると、2階の寝室の扉を開けておけば、薪ストーブのぬくもりがベッドまでしっかりあたためてくれるそう。さまざまな暖房器具が豊富に揃う現代でも、やっぱり昔から存在する炎のあたたかさは、気持ちがいいものなのですね。

大事なものを、ずっと大切にできるように。
既にある快適さを、もっと感じられるように。

kinotoのスタッフから見たOさま一家の印象は「とても仲がいいご夫婦」。

「昔からずっと大事に使われている机があること、奥さまがお料理好きだということ......そういうお話を聞く中で、おふたりが大事にしているものを変わらず大切にできる家にするにはどうすればいいか、もっとふたりの仲のよさが深まる空間はどんなものかを考えてご提案させていただきました」と、kinotoのスタッフは提案時のことを振り返ります。

「最初に提案された図面を見て、直感でいいなと思ったんですよね。以前、他社で提案してもらった図面が、既存の間取りをそのまま活かしたものだったんです。でも、kinotoの図面は僕たちには思いつかないようなアイデアで溢れていて。絶対にこっちの方がいい!と思いました」と、ご主人。

その図面をベースにつくられた今の住まいは、リビング・ダイニングを隔てていた壁をなくして、ゆったりと寛げる空間に。開放感を保ちつつも、作業などができるデスクスペースを間に設けることで空間をほどよく仕切っています。

「"廊下スペースが広いから、せっかくなら空間として活用しましょう"と、リビングと廊下の間にデスクスペースをつくってくれたんです」と、奥さま。

デスクの棚は手持ちのプリンタがスッキリ置けて、スッと手前に引き出せるようになっています。このちょっとした一工夫のおかげで、作業がとても捗るのだとか。

「実は、リノベーション前にこの家の状態を確認したときの印象が"暗い"だったんです。南向きの窓はあるものの、リビングとダイニング、キッチンを隔てる壁によって陽当たりが悪くなっていて。そこを解消して、奥さまが大切にしていた"陽当たりのよさ"を1階すべての空間で感じられるように設計を考えていきました」と、kinotoのスタッフは言います。

さらに、1階にはもともと和室があったそうですが、それをすべてなくし、土間やシューズインクローゼット、リネンルームやランドリースペースなどの空間にゆとりを持たせているのだとか。

理想を叶えたいからこそ、本音で話し合い。
だからこそ完成した、ふたりの住まい。

「仲のいいご夫婦」という印象はありつつも、「今だから言えますけど、打ち合わせ中のOさまご夫婦は意見が衝突することも多かったですよね」と、当時を語るkinotoのスタッフ。

例えばお風呂なら、奥さまは「窓がほしいから今あるものをのこしておきたい派」、ご主人は「別に窓なんていらない派」。そんな風に、細かいところでちょこちょこと意見がぶつかっていたそうです。

「でも、窓があったらあったで、主人はめちゃくちゃ使ってますけどね」と話す奥さまに、「まあそりゃ、あったら使うよ」と返すご主人。そんなやり取りから、何でも本音で話し合える信頼関係がうかがえます。

長く住む家だからこそ、自分のこだわりも、相手のこだわりも大切にしたいのはきっとどのご家庭も同じ。おふたりに、意見が合わないときはどうすべきかのアドバイスを聞いてみました。

「こだわりたいポイントをそれぞれ決めておくことですかね?例えば、キッチンなら僕よりも妻の方がよっぽど使うから、キッチンはもう僕からは何も言わない!とか」と、ご主人。

「うんうん、キッチンも最初は高さをどうするかで言い合ったけど、最終的には私の想いを優先してもらえました」

また、階段下の収納スペースを活かしてつくったパントリーも、奥さまのお気に入り。

「小さめの冷蔵庫や冷凍庫も置けるぐらいのスペースがあって、すごく気に入っています。キッチンも以前より格段に広くなって、料理をするのがもっと楽しくなりました」と、奥さま。

ちなみに、リビングにある木製のスピーカー棚は、kinotoのお手製なのだとか。ここは、ご主人のこだわりをkinotoが汲んで提案したものだそうです。

「でも、ふたりで一緒にこだわったところもたくさんあるよね。ひとつは、リビングの壁を一部塗り壁にしたこと。サンプルで見せてもらった色が何千色もあって、すごく迷いました。小さいサンプルから空間全体に塗ったときのイメージをするのが大変で」と、奥さま。

「スイッチもこだわったよね。アンティークっぽいアメリカンスイッチにしてもらって」

「そうそう、これがすごくよくて。以前から雑誌でインテリアの特集とかを見るたびに"こんなのがいいな"ってずっと思っていたんです。キッチンのカップボードも、引き出しの取っ手も、ぜんぶ好きなものを選ばせてもらいました」

と、楽しそうに当時のエピソードを話すOさまご夫婦。さらに、リビングの床はおふたりでオイルを塗ったのだとか。2階から降りてきてリビングの床が目に入るたび、塗った日の思い出が蘇り、「やっぱり、やってよかった」と思えるのだそう。そんな風に、夫婦の共同作業が家の中に見え隠れするのも、リノベーションならではです。

夫婦の想いに、本音で応えて、超えていく。
注文住宅にも強いkinotoだからこそ、できること。

「いつでも自由に、音楽が思いっきり聴けるように」そんな想いをきっかけに始めたOさまご夫婦の家づくり。今の暮らしは、以前とどのように変わったのでしょうか。

「自分の聴く音楽や奏でる音が、近隣に迷惑をかけていないかを気にする必要がまったくなくなった。それがすごく嬉しいですね。それから、前の家は便利と言えば便利だったんですが、幹線道路の近くでもあったので結構騒音が激しかったんです。今、この家から聞こえてくるのは鳥の鳴き声ぐらい。向かいの森から、天気の良い日は特によく聞こえてきますね」と、ご主人。

一戸建てに住みたい。その想いが芽ばえるきっかけにもなった条件が、しっかりと満たされていることが伝わってきます。そんなおふたりに、改めてkinotoのよさを語っていただきました。

「設計を考えてもらうとき、ただこちらの言うとおりにつくってもらうこともできたと思うんです。でもkinotoは、"ここはこうした方がいいですよ""それなら、こっちの方がいいです"と、専門的な知識を活かしたアドバイスをくれて。全部僕たちの理想そのままやってもらうより、職人目線でいろんな意見をいただけたことで自分たちも勉強になったし、結果的にすごく住み心地のいい家になったなと思います」

「kinotoは注文住宅でいちからさまざまな設計を手がけている実績が多い分、リノベーションでも提案できることの幅が多いんです。おふたりにそう思っていただけていると知ることができて、私も本当に嬉しいです」と、kinotoのスタッフも笑顔で応えます。

予算を抑えながらも、自分たちの理想の家に住みたい。そんな想いを叶えてくれるリノベーションという選択。おふたりが築いていくこれからの暮らしが、とても楽しみです。